最近よく使われている抗うつ薬は、古い抗うつ薬ではなく新しい抗うつ薬です。抗うつ薬は神経の伝達を促進する「神経伝達物質」を増やすものです。新しい抗うつ薬は、そのほとんどすべてが、セロトニンあるいはノルアドレナリンという神経伝達物質を増やすものです。それにくわえてドパミンを増やすような作用をもつ内服薬もあります。セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンという神経伝達物質は理論として考えられているものですが、たしかに、抗うつ薬で大きく症状が改善してしまう方々が少なからずいらっしゃいます。
大脳には150億もの神経細胞があります。神経細胞と神経細胞は接続して連絡し合いますが、接しているのではなくて、隙間があります。神経伝達物質とは、神経と神経のあいだを連絡して、情報を伝達する物質です。片方の神経がピッチャーのように神経伝達物質を投げて、それをもう一つの神経がキャッチャーのように受け取ります。それによって情報を伝達するのです。この神経伝達物質がうまく投げられなかったり、うまく受け止められなかったりしたら、神経のシステムが機能低下を引き起こします。
抗うつ薬の中には神経伝達物質は含まれていませんが、神経伝達物質の分量を増やしたり、機能を高める作用があるとされています。
神経細胞からは、軸索という長い神経繊維が伸びています。神経伝達物質が増えてくると、損傷された神経繊維が修復されて充実してくることが近年注目されています。これがどうやらうつ病の回復に寄与しているようです。
抗うつ薬は1970年代から現在までも使われているものもあれば、新しく開発された抗うつ薬までさまざまなものがあります。ただ一体どの抗うつ薬を用いるのかということで迷うことがあるのです。これが世界各国で議論になり、多くのガイドラインが作成されています。ガイドラインは多種多様ありますが、内容はある程度は似ています。
内服薬の選択に関しては、ます最初に使うものとして推奨されているのは、どのガイドラインはほぼ共通しています。つまり、セロトニンやノルアドレナリンという神経伝達物質を選択的に増やす薬剤が最初に用いるべきものとして推奨されています。これは数種類の薬剤があります。日本には約5種類です。どれも比較的新しく開発された抗うつ薬ばかりです。ちなみにこれらの薬は、「ファーストライン」と位置づけられています。