大うつ病性障害の有病率は、
・時点有病率が4から5%
・生涯有病率が16%
といわれています。
時点有病率とは現在うつ病を患っている人の割合です。
生涯有病率とは、一生のうちで1回でもうつ病になったことがある人の割合です。
ということは、
・いまうつ病である人はおよそ19から20人に1人。
・一生のうちにうつ病になったことがある人はおよそ6人から7人に1人。
ということになります。
これは治療を受けた人の数ではなくて、治療を受けなかった人の数も含まれています。
この数字をどのようにみるのでしょうか。本当にこんなに多いのでしょうか、びっくり、という感想が一般的かと思われます。日頃うつ病の診療をしている立場の人からも、こんなに多いのかな、という漠然とした疑問です。
うつ病の統計調査では、ちょっと調査によって結果のばらつきが大きいかもしれません。たとえば統合失調症なら、今も昔も1パーセント弱ということでどの調査結果もだいたい一致しているといわれます。というのも、統合失調症に特有の幻覚や妄想は普段は発生することは滅多にないからです。でもうつ病の場合はそうではありません。気分が沈んだことがない人はいません。また長く悩んで気分がすぐれないことも何度も経験するものです。こういった辛い経験が、逆に人生に幅を持たせて奥ゆくが出てくるということだってあるかもしれません。晴ればかりではなくて、曇ったり、雨だったり、時には雨が長く続くこともあります。だから「うつ病」は、非常にわかりにくい側面があります。
うつ病の有病率の正確なところはまだはっきりしていないのでしょう。
でもやはりうつ病は多いのも確かですから、気をつけないといけないといけません。ストレスで身体をこわす心身症があるように、脳も心身症になることもあります。しかも、身体より脳のほうが細かく繊細にできていて心身症にはなりやすいものだ、思ったほどキャパシティーが大きいわけでもないようだ、というふうに考えておいたほうがいいかもしれません。