2014年に登場した新しい不眠症治療薬ベルソムラは、脳内に存在するオレキシンという物質の機能を抑制します。そのことで覚せいネットワークのシステムをいったんシャットダウンして、睡眠をとりやすくします。従来の睡眠薬は、眠気を促すような作用であるのに対して、この新し不眠症治療薬は、覚醒しすぎている状態を緩和させる作用があります。従来の睡眠薬のように内服して急に眠気を催すのではなくて、緩やかに眠気を感じて自然な眠りに近づけます。
まず、ここではこの治療薬のメリットとデメリットについて列挙しておきます。これらから考えると、総じて比較的安全性は高いと考えられます。
・自然に眠気が生じるのはメリットですが、あまりシャープな効果が得られず、入眠までに時間がかかることもあります。入眠の30分か1時間前に内服しても構いません。内服後は入浴や家事などは避けて、ストレッチしたり読書をしたり、ゆったりと時間を過ごすのがよいです。
・作用時間は内服してからおよそ7時間です。途中覚醒や早朝覚醒にも効果があります。早く起床するときには、朝に眠気が残る場合があります。7時間は床についているほうがよいです。人によっては7時間以上効果を持続する場合もありえます。もともと睡眠時間が短い人には不向きかもしれません。
・一定の状態が得られるのに3日くらいかかります。1,2週間くらい内服して効果の有無を判定するのが良いでしょう。
・ストレスによって目がさえた状態(過覚醒状態)のときに効果が期待できます。
・ふらつきが生じにくいです。その点、高齢者にも使いやすいです。
・途中覚醒したときでも、再入眠しやすくなります。
・依存性がありません。つまり内服したくなるという身体依存がありません。(もっともほかの睡眠薬や安定剤も依存性があっても、ごく軽いです)
・乱用、悪用がされにくいです。
・継続的に内服していて急に中止しても、リバウンドで不眠が発生するということがない。つまり反跳性不眠ないしは退薬症候群が生じにくいです。
・睡眠時無呼吸症候群を悪化させにくいです。
・夜間摂食症候群(夜中に食事をしているが次の日の朝にそのことを覚えていない)を悪化させにくいです。
・従来の睡眠薬を複数種類を試みて効果がない場合であっても、この薬では改善することも期待されます。というのも従来型と作用メカニズムが全然異なるためです。