社会不安障害の症例

【ケース1】

 中学生のころ、国語の授業で当てられて朗読をさせられ、急に緊張が高まり、ドキドキして手や声が震えてしまった。緊張が周囲に伝わっているのではないかと思い、緊張は極度になった。この体験が大きなショックになり、これ以降、人前で話すときには、極度に緊張が高まる。頭が真っ白になってしゃべれなくなることもある。大変苦痛感が強いため、出来るだけ人前で話すのを避けて、断るようになった。

【ケース1の解説】

 思春期に、自意識が高まって、注目される場面で緊張が極度に高まることがあります。中学生のころから始まるのが一番多いですが、小学生の時から始まるばあいもあります。このような極度の緊張は一時的なこともあるのですが、成人しても持続する場合が少なからずあります。ということは20年、30年と続くのです。

 この苦痛感は非常に強く、なんとか苦手場面を避けたいきもちでいっぱいになります。何日も前から、あるいは何週間も前から不安で苦しむこともあります。

【ケース2】

 もともとあがり症のところもあったが、特に大きく困ることもなかった。社会人になり、また評価もまずまずで順調に昇進をしたが、昇進をするにつれて段々に大勢のまえで話す機会が増えて、失敗してはならないという思いから、緊張が高まるようになった。それに加えて、手の震えや動機などが伴うようになり、極度に緊張するようになった。

【ケース2の解説】

 もともと若干のあがり症だったのですが、社会人になって、評価がよいと、通常より早めに昇進したり、若くして抜擢されたりなどがきっかけとなって、それ以降、緊張が非常に高まることがあります。責任が大きくなることや、周囲から注目を浴びる場面で失敗することが気がかりになります。


【ケース3】

 会食の時に極度に緊張してしまう。ナイフやフォークが震える。また、人前で字を書くときになると非常に緊張してしまって震えて、字が書きづらい。

【ケース3の解説】

 実は、会食のときに緊張するのはよくあるパターンの一つです。あらたまった場面では、対面して見られているので、失敗しはしないかと、緊張しているうちに、手が震えてしまって、相手に緊張が伝わって、和やかな雰囲気を乱しているとか、変に思われはしないかとか、心配になります。

 また人前で字を書くときに、手元を見られていると緊張が高まり震えて字がかきづらくなることで大変こまってしまいます。ときにはミミズがはったような字になることもあります。


【ケース4】

 日常的にいろいろな場面で対人緊張が強くて、日々苦痛感が強く、社会生活に支障をきたす。

【ケース4の解説】

 このケースではより本格的な症状がでていて、社会生活上の障害も大きいと思われますので、SSRIなどによるより積極的な治療が望まれます。