注意欠損多動性障害(ADHD)と軽度の自閉症(アスペルガー症候群)は別のものです。ここでは両方の違いについてお話しておきたいと思います。実際には時々この区別は難しいことがあります。それぞれの得意、不得意を把握することも大切です。
注意欠損多動性障害(ADHD)はうまく実行できない障害があります。いわゆる「実行機能の障害」です。軽度の自閉症にもやはり実行機能の障害があるように見えることがあります。ただし、この実行機能障害のあり方が、ADHDと軽度自閉症では似ているように見えて異なっています。
ADHDの実行機能の障害の特徴は、当の本人が「状況がわかっているけどうまくできない」、ということです。それにたいして、軽度自閉症の場合は、「状況がわからないのでうまくできない」のがポイントです。軽度自閉症の場合には、臨機応変に場面の状況を把握することが苦手です、つまり状況が動くとわからなくなりやすいのです。そしていつでもどこでも同じパターンで実行しようとして失敗しがちです。ADHDでは動きがあって変化がある状況の方を好みます。
またAD/HDは、あれやこれやと活動することが色々と思い浮かんで、活動が増えてしまう傾向があります。そのために一つのことに集中を持続することが困難になります。もっともすごく興味のあるところであれば過度に集中しすぎてしまうこともあります。それにたいして、軽度の自閉症の場合には、淡々と一つのことに取り組み続けたり、一つのことだけに集中して深堀りしたり、同じ行動パターンになったりしがちです。地道に堅実に淡々とルーチンワークをこなせます。パターン化することに成功したならば、非常に複雑な作業であっても、精度も高く、高効率に行えることも少なくありません。成功はパターン化できるか否かにかかっているともいえます。
大雑把に言うとADHDの場合には、動きのある仕事が得意で例えば、その人の才能を活かして営業やデザインその他のクリエイティブな新規性のある仕事にむいていて、軽度の自閉症は、難度が高くてもパターン化可能な作業内容を落ち着いて静かな環境できること、マルチではなくて、専門分野を極める深掘りの仕事、研究者などに向いています。
※ ただし、注意欠損多動性障害(AD/HD)と軽度の自閉症は、併存していることもあります。つまり異なった行動様式が混在しているということです。