抗うつ薬を使う場合には、少なめから開始して、慣らしながら増量するものです。どんな抗うつ薬でも最小量で十分な場合もあります。また、レクサプロという抗うつ薬は増量しなくても自動的に増量したのと同じような機能を持っているので増量は必須ではありません。
問題は、どれくらいの量が必要なのか、どこまで増量するのかということです。できれば「必要最少量」にしたいというのが人情です。これについては患者さんの側も担当医の側も同じ気持であることが多いのです。必要もない薬は出したくもありません。それでは「必要最少量」を目指して内服薬を調整してもいいのでしょうか。実は、内服の量が少なすぎるために不調をきたすということが意外に多いといわれています。これはたとえば会社の健康管理部門に務める産業医が直面する問題の一つです。産業医は復職者と面談をしてその後のフォローアップをするのですが、内服薬の量が不足しているのではなかいと思われる再発例が散見されるのです。担当医もできれば薬を少なくしたいので、薬は少なめになりやすいのです。休職している人は、ストレスが少ない状態で安定しているので、内服量も少なくてもよいのですが、復帰して間もなくはストレスが強くなると、不調をきたしやすくなります。それについては内服量を増やすと、また安定してくることが少なくありません。そして就労のほうが安定して、再発のリスクも下がってきたら、だんだんにまた内服量を減らします。
一般に、抗うつ薬は「必要最少量」よりはすこしゆとりを持った分量、つまり「必要十分量」を処方したほうが良いと言われています。それは社会生活の中で、時には少なからず大きめのストレスもあるからです。そのストレスがくるたびに再発を繰り返していたのでは、よくないからです。薬を出しすぎる(over medication)のもよくないのですが、薬を出さなさすぎる(under medication)のもよくないこともあります。もちろんケースバイケースでありますから、少量でも大丈夫な場合も少なくありませんので、個々において検討することになります。